『Craftie Home Box』は、毎月さまざまなハンドメイド体験をお届けするサブスク定期便。季節によって衣替えするように、シーズナルな小物を自分で手作りしたり、少し手を加えたりすることで、おうちが自分だけの愛おしい場所になったらいいな。そんな思いから生まれました。
キットづくりの着想から完成まで、キットチームの舞台裏を紹介する制作ストーリー、今月はインテリアクレイのお話です。
「大人クレイ」から広がった素晴らしい“妄想”
「あったらいいな」が自由に作れるものって何だろう? キットチームの企画会議での問いかけ。形も色も思いのまま、五感がうんと刺激されるものって何だろう? そのミーティングで浮上したのが「クレイ」です。
クレイ(clay)とは英語で粘土のこと。粘土って、子どもの頃にいろいろ作ったあれのこと? 頭の中に幼い頃に作った動物やら自動車やらが浮かび、いまひとつピンとこない・・・。と、そのとき、キットチームのひとりが見せてくれたのが、インテリアショップに並んだおしゃれな花瓶やオブジェのビジュアル。そして「これって、“大人クレイ”じゃない?」とつぶやいた。
「大人クレイ」――。その言葉から油粘土で作った動物や自動車が消え去り、一足飛びにおしゃれなリビングへと心がワープ。そこにかぶせるように続いた「ほら、陶芸みたいな感じで」という言葉にさらに心を揺さぶられ・・・。
「大人クレイ」「陶芸みたいな感じ」という言葉から、ぽってりとした花瓶やユニークなオブジェが並んだおしゃれなシーンがありありと浮かび、なんかとてつもない素敵なプロジェクトが始まる予感がしたのです。
老舗メーカーで理想のクレイに出会う
「大人クレイ」をテーマに、私たちが門戸を叩いたのは、クラフトや手芸の材料や教材の製造・販売を行うパジコさん。粘土を作り続けて52年という老舗で、樹脂粘土、石塑粘土、紙粘土、木質粘土など、あらゆる粘土を研究・開発している会社さんです。
企画の素案を携えて、東京・原宿にあるパジコさんのオフィスを訪問。エレベーターを上がると、粘土で作った繊細な作品がずらりと展示されています。わぁ、メーカーさんっぽい。
会議室に案内されたキットチーム。さあ、企画を説明しなくては。でも、その前にCraftie Home Boxについてちょこっとプレゼン。キット制作にかける私たちの思いをひとしきりしゃべらせていただいた後、妄想で膨らんだたくさんのインテリア写真のピースをお見せしたのでした。
私たちの熱いトークに耳を傾け、ときに静かに頷くパジコさん。「それならば、」と穏やかに口を開き、「石塑粘土がぴったりだと思います」と教えてくれたのは松井周子さん。松井さんは全国各地でワークショップや作品提案を行い、新たな粘土ブームを作るべく日々奔走している粘土のエキスパートです。
「石塑粘土は、石の粉からできている粘土で、焼き物のように釜で焼く必要がなく、乾かすだけで固くなり、陶器のような滑らかな仕上がりになります」と、さらに詳しく説明。
「陶器のような仕上がり」という言葉に、目を輝かせたキットチーム。まさに「大人クレイ」です。
「実際にお見せしますね」と、松井さんはいろんな種類の粘土や作品サンプルをテーブルに並べ始めました。さすが粘土のメーカー。出てくる、出てくる、次々といろんなものが。
アクセサリーづくりにぴったりな軽量の石塑粘土など、興味津々の素材もあったけれど、今回、私たちが目指しているのはインテリア小物。適度な重さはあったほうがいい。松井さんの適切なアドバイスのもと、Craftie Homeのキットによさそうな候補をいくつか絞りました。あとはキットチームの試作会で実際に検証です。
私たちは今回のキットで使う粘土を「インテリアクレイ」と呼ぶことにし、Craftie Homeらしいパッケージを作らせてもらうことにしました。
こねているだけでも癒される
おしゃれなインテリアショップに並んでいる花瓶やオブジェ・・・。クレイで作りたいもののイメージはできています。試作会では、実際に作れるものかどうかを自分たちで手を動かして丁寧に検証していかなければなりません。
まずはキットチームのメンバーそれぞれが、花瓶、アクセサリートレイ、オブジェといったアイテムを自由に作ってみることに。
インリアオブジェを作るために、羊毛でねじり方をイメージトレーニングしてみたり。
テラコッタ風の粘土でも作ってみたり。
アクセサリートレイはシェル型の型紙を作り、それを使って粘土をカットするところからスタート。
ヘラを使った模様作りにも挑戦。いちから模様をつけるとなると力加減で出方が変わったり、どこまで繊細にするかも全部自分次第だったり。いろいろと試行錯誤しながら好きなように作っていくのって、こんなに楽しいんだと改めて実感。
「ボンボンキャンドルって、韓国インテリアで人気だよね。っぽい感じで作ってみる?」という話から、ボンボンホルダーにもトライ。とにかく小さなボールをたくさん作って積み上げてみようということに。
ちょっと大きいたまごボーロみたいで、なんだか愛おしくなるなあ、このボール。手のひらに挟んでくるくるとボールを作る、作る、作る・・・。「これって癒される~」「ただ粘土をこねているだけでも、楽しい」と口々に。うん、こんな時間、絶対必要。
ひとしきり作りきると、各々の作品を一堂に会し、品評タイム。かたち、作りやすさ、かわいさ、おうちに飾りたいかどうか・・・。さまざまな観点からチェックして、今回のキットで提案するアイテムを決めます。
いつものごとくロングディスカッションを経て、ついに一輪挿し、シェルトレイ、インテリオブジェ、ボンボンホルダー、リングスタンド、アロマストーンの6アイテムに決定!
インテリアクレイは乾くまで時間がかかるので、仕上げと色つけの工程は1週間後に。
やすりの威力とニュアンスカラーに感動!
1週間後、再び試作会。すっかり乾いて固まった作品たちと対面です。
仕上げで使うツールは紙やすり。今回のキットでつけるのは、目の粗い中目、細かな細目、さらに細かい極細目の3種類です。
まずは中目で全体にやすりをかけ始めます。すると面白いくらい、どんどん表面がツルツルに。成形時にちょっといびつになっちゃった部分も、やすりをかけたらきれいになった! やすりがけの威力、素晴らしい。パチパチ。これなら成形で多少失敗しても挽回できるね、とにっこり。
着彩の工程で使うのはアクリル絵の具。赤、青、黄、白の4色です。この4色でおしゃれなニュアンスカラーを出せるのかが重要なチェックポイント。
ペイント歴の長いチームメンバーがみんなをリードする形で進みます。
「色を試していると、どうしても広がっていって隣と混ざっちゃったりするから、紙パレットは何枚かに分けて使うと便利」と、自らの経験をシェア。さらに、「クレイなどに色塗りするときは、粘土の切れ端を取っておいて試し塗りするのがおすすめ」と。
余ったクレイで作った小さなバーにささっと色を塗っていく。色分けされた様子が妙にかわいくって、「これって箸置きになりそう♪」「でも、水洗いできないよねー」なんて、おしゃべりにも花が咲きます。
たった4色から次々とニュアンスカラーができていく工程に感動!いろんな色を混ぜて好きな色味になるよう調整していくことは発見の連続でした。こういう色にするには次はこの色を混ぜてみようかなぁ。そんなふうにいろいろ試して自分の好みの色を追求していくところが本当に楽しかった。
色づくりのティップスは、「DIYやリメイクの幅も広がる♪ニュアンスカラーの作り方」という記事でも紹介しています。
アイテムが決まり、Craftie Homeとしての希望の色がまとまったところで、実際のマスターサンプルづくりをパジコの松井さんへ託します。
「お部屋に迎えたくなる」シーンを提案
マスターサンプルができ上がると、いよいよ撮影です。Craftie Home Boxで伝えたいのは、作る楽しさであり、それを暮らしの中で生かす喜び。「ほんの少し手を加えると おうちが愛おしい場所になる」が、すっと伝わるようなビジュアルを考えていきます。
撮影前日は毎回、全カットを最終コーディネート。実際にスタイリングしてみてスマホで写真を撮り、用意する小道具をリストアップ。粛々と準備を進めているつもりでも、いつも前日は大わらわ。シーンにちらっと映り込ませたい生花は前日に調達するので、近所のフラワーショップを4、5件はしごするのはもはやルーティーン。毎回、試験前のラストスパートの追い込み気分です。
今回のスタイリングのポイントは、「インテリアクレイのある暮らしっていいな」が伝わるシーン。クレイがあるだけで、空間がぐっとおしゃれになる。目指すのはそんなビジュアルです。
撮影当日、大理石風の天板を使ったらとってもいい感じに。用意したParisの洋書はクレイの大きさにちょうどいいサイズ。Kinfolkの大きな本に重ねたら、おしゃれな1シーンになりました。
ボンボンホルダーは、韓国インテリアで人気のファブリックポスターもちら見せして。
撮影日には、スタイリングシーンのほか、制作シーンや動画も一気に撮ります。毎回、20カットを超える盛りだくさんの撮影は、まさに時間との戦い。モデルさんやカメラマンさんのプロフェッショナルな仕事ぶりに頭の下がる思いです。
手軽な時代に、あえて手作りする楽しさを
撮影が終了すると、ひと山超えた感。でも、ここからが商品紹介や特集記事、小冊子など、あらゆる原稿の締め切りがどっと押し寄せます。このタイミングでインテリアクレイの魅力をさらに深掘りするのです。仕入れ担当者へ根掘り葉掘りの社内インタビューを行うことも。
インテリアクレイの素晴らしさは? 「手ひとつでいろんなものを創造できるところ。『あったらいいな』と想像したものを思いのまま作れるところ」と仕入れ担当者。さらに、
「自分の誕生花をモチーフで刻んでチャームにしてもいいし、実用性を追求してたくさんフックがあるリングホルダーなんかを開発してもいい。なんなら、作りたいものがすぐに思い浮かばなくても、ただ粘土を手でこねているだけでもひんやり滑らかな手触りで癒される・・・」と語りだしたら止まらない様子。
手軽な時代にあえて手軽ではないことをする楽しさ。インテリアクレイにはそんな魅力があるのです。