『Craftie Home Box』は、毎月さまざまなハンドメイド体験をお届けするサブスク定期便。季節によって衣替えするように、シーズナルな小物を自分で手作りしたり、少し手を加えたりすることで、おうちが自分だけの愛おしい場所になったらいいな。そんな思いから生まれました。
キットづくりの着想から完成まで、キットチームの舞台裏を紹介する制作ストーリー、今月はお正月飾りと水引小物のお話です。
12月ってどんな月?
キットを企画するときにいつも頭に思い浮かべるのは、「この月ってどんなことしてるかな? どんな気分でいるかな?」ということ。12月ってどんな月だろう? クリスマスにときめいて、年の暮れであたふたして・・・。何かと慌ただしいけれど、過ぎていく年を振り返り、迎えくる年に希望をつなぐ月。現在の自分から未来の自分へとバトンを渡す月でもあるのかな、なんて思ったり・・・。
もうすぐ出会う未来の自分のために、まずは丁寧に新年を迎えてみる。そんな提案をしてみたくなりました。お正月の準備といえば、門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理・・・。どれも日本の伝統文化に根ざしたものばかり。一連の準備アイテムのうち、自分で手作りするのなら、やっぱりしめ飾りがいいよね。キットチームでの話し合いから、12月にお届けするものが決まりました。
伝統を踏まえたモダンなお正月飾り
Craftie Homeのキットでは、毎回、その道のエキスパートに作品制作と監修をお願いしています。お正月飾りの制作・監修は、クリスマスのリースに引き続き、フローリストの猪飼牧子さん。猪飼さんの植物教室でも12月はお正月飾りのワークショップが大人気だそう。
Craftie Homeが提案するなら、伝統を踏まえつつも、スタイリッシュな雰囲気を併せ持つお正月飾りにしたいな。そんな思いにピタッとはまったのが、水引を使ったお正月飾りです。水引は飛鳥時代から伝わる日本の伝統文化。遣隋使の返礼品に結ばれていた紅白の麻紐が、現在の形に変化していったそう。そんなストーリーも気に入りました。
水引を使ったお正月飾りはさまざまなデザインがあるけれど、3つの輪が結ばれたデザインが気になりました。あまり見かけない形で、なによりも縦長でシュッとした形がとてもスタイリッシュ。この形で提案したい!
まっすぐな水引をお届けして、3つの輪っかを作るところから手作りを楽しんでもらったらどうかな? 初心者がいちから作れるか、さっそく水引を取り寄せて3つの輪っかづくりに挑戦しました。
しかし、実際にやってみると意外に難しく、大苦戦。束にした水引をネジって丸めてそのまま下に流したらたわんでしまい、とてもいびつな形に。しかも一度たわむとクセがついてしまって真っ直ぐに戻らない・・・。
無理なく作れて、おしゃれに仕上がる。それがCraftie Homeがめざすハンドメイドキット。手作りがそれほど得意ではないチームメンバーでもつまずかずに作れることが、キット開発の大事なバロメーターになっています。
水引から輪っかを作るのは難しかった! そんな検証結果を元に、3つの輪がセットされた状態で入手できるか、さっそく仕入れ先様に相談。こちらの事情をあうんの呼吸で理解して、すぐさまセット済みのサンプルを作って送ってくれました。
届いた箱を開けてみると、3つの輪っかからたわむことなく、みずひきがまっすぐに伸びている!さすがプロの仕事!とってもきれいな水引セットにキットチームもひと安心。水引はセット済みで行こう! 清々しい白の水引をメインに、差し色として赤を使うデザインに決めました。
大枠は決まったけれど、これでよし、とならないのが、キット開発の奥深さ。3つの輪っかのバランス、大きさ、真ん中に貼るゴールドのシール・・・あらゆるパーツがCraftie Homeとして提案するのにふさわしいかをくまなくチェックするのが次の段階です。「あと5ミリ、小さくできるか」など、細かな調整を繰り返します。「美は細部に宿る」。ここで妥協は禁物。しつこいと思いながらも、仕入れ先様と電話、メール、電話、メール、の応酬がひとしきり続くのです。
最後の最後に加えた花材とは?
水引と並行して進めていたのが、花材のセレクト。しめ飾りには、お正月にふさわしい縁起のよい花材を選ばないとなりません。神様の依り代とされる「松」、実り多い年を祈願する「稲穂」、そして「難を転じて福となす」といわれる「南天」。この3つをマスト花材にして、ここにどんな花材をプラスして、Craftie Homeらしいお正月飾りにするかが、キットチームの腕の見せどころです。
3つのマスト花材のほか、お正月にふさわしいものとして、大きなシダの「ウラジロ」も候補に上がりました。
ウラジロは、葉っぱの裏が白いことから「白髪になるまで長生きする」ことを表す、縁起のよい花材。さっそく仕入れ先様に問い合わせたところ、ウラジロの葉は、15cm~30cmとサイズに開きがあるとの回答。個体差をできるだけ抑えたいキットには不向きです。残念がる私たちに、「ウラジロに似た葉っぱでヒメワラビというものがありますよ」との、ありがたい提案が。
さっそくサンプルを取り寄せてみたら、これがとっても素敵! 横に広がる葉っぱが、シュッとした松や稲穂の素晴らしい引き立て役に。ヒメワラビという名前もかわいくって、大満足。ここでも仕入れ先様に助けられました。
8割がた花材が決まったところで、あともう1つ、花材を加えたい。お正月らしい縁起のよい花材に、Craftie Homeらしいスタイリッシュさを表現してくれるものを。赤い葉っぱの「おかめ南天」も“最終選考”に残ったのですが、実際に組んでみると赤がやや強すぎました。
私たちが最後の最後に選んだのは、ユーカリ。一年を通じておうちをおしゃれに彩ってくれるユーカリは、お正月飾りに合わせても、やっぱりいい感じで、さりげなくトレンド感をプラスしてくれます。ヒメワラビよりも一段ダークなトーンも、全体の引き締め役になりました。
プチギフトで「水引小物」の手作りを
Craftie Home Boxでは、メインのキットと一緒に、ちょっとしたプチギフトをつけています。12月Boxでつけたのは、水引小物をあしらった箸袋とぽち袋。水引を束ねて大きなしめ飾りを作るのは難しくても、小さな「水引小物」の手作りはぜひ体験していただきたい! そんな思いで企画したものです。
箸袋とぽち袋は作りやすい折り紙サイズで考案。当初、市販の折り紙を仕入れるつもりが、色合いが素敵な折り紙は両面印刷だったり、厚すぎたりでしっくりきません。であれば、自分たちで作ってしまおう!と、オリジナルカラーの紙を作りました。当初、ピンクも入れて3色で検討。微妙な色合いに迷いに迷ったあげく、最終的には、落ち着きのある赤と華やかなイエローベージュの2色に決定しました。
箸袋とぽち袋は、1枚の紙からハサミを使わずに折り包む、日本独自の美しい文化、折形(おりがた)を参考に作成。水引小物は、水引作家の篠原啓子さんに制作と監修をお願いしました。
篠原さんは、金沢在住時に町の伝統工芸である水引細工に魅了され、制作を始めたそう。しめ縄やご祝儀袋でしか見かけなかった水引が、金沢では、彩り豊かな水引アクセサリーや水引小物があちこちにあり、カルチャーショックを受けたと言います。
「それまでは職人さんたちが作る敷居の高い物という認識でしたが、近所のママたちがお茶をしながら作っていたり、近くのお店で材料が簡単に手に入ったりして、とても身近なものに感じました。自分の趣味やコミュニケーションツールとして、私も水引細工を作りたい!と魅了され、すぐに制作を始めました」(篠原さん)
そんな篠原さんに、今回のプチギフトで作ってもらったのは、8の字結び、あわじ結び、梅結びの3種類。篠原さんの提案で、アシンメトリーのあわじ結びや外側だけ広げた梅結びも加わり、いっそう華やかに。
「水引は、特別な道具をそろえる必要がなく、自分の手とハサミがあれば簡単に始められるのも魅力です。新しい結びを学んだり、オリジナルの結びを考えたりする工程も楽しく、気分転換や脳トレにもなります」(篠原さん)
水引小物の作り方は、レシピ動画でもしっかり収録。篠原さんによる実演と細やかなテロップ説明のおかげで、初心者でも無理なく作れて楽しめるレシピ動画が完成しました。
新年を清々しい気持ちで始められますように。そんな願いを込めて。