「Craftie Home Box」は、毎月さまざまなハンドメイド体験をお届けするサブスク定期便。季節によって衣替えするように、シーズナルな小物を自分で手作りしたり、少し手を加えたりすることで、おうちが自分だけの愛おしい場所になったらいいな。そんな思いから生まれました。
キットづくりの着想から完成まで、キットチームの舞台裏を紹介する制作ストーリー、今月は4つの作品が作れる刺繍キットのお話です。
Craftie Homeらしい刺繍体験を届けたい!
「ハンドメイド」をキーワードに、アンテナを張り巡らせている私たちにとって、「刺繍」は横綱級の存在。オリジナルレシピを紹介する私たちのwebマガジン「Craftie Style」でも、常に人気記事ランキングの上位に君臨する刺繍は、「いつかやってみたい」憧れのハンドメイドなのです。
今回、ついにサブスク定期便「Craftie Home Box」で刺繍Boxを出すことになったとき、大人気のジャンルだからこそ、ほかにない内容にしたい! Craftie Homeならではの刺繍体験を届けたい! と、気合い十分。いつにも増して企画を練りました。
私たちは、「刺繍キット」という固定概念をいったん捨て去り、Craftie Home Boxを購入してくださっている方々を思い浮かべてみました。ボタニカルなものが好き、おうちが好き、お花が好き、インテリアが好き・・・。連想ゲームのように想像をめぐらせていくと、刺繍のある暮らしの風景にたどり着きました。
たとえばそれは、こんな風景。
・お気に入りの刺繍作品はとっておきのフレームに入れてリビングに。
・作りかけの作品はお花と一緒に壁に飾って小さなアトリエ風に。
・ワンポイント刺繍のプレイスマットは、テーブルコーデに。
少しずつ輪郭を帯びてきたひとコマ、ひとコマをつなぎ合わせながら、私たちが実現したい刺繍Boxの内容を1つ1つ書き出していきました。
・でき上がった作品が、おうちに飾りたくなるほど魅力的であること。
・いろんなシーンに飾れて使える、ほどよい実用性があること。
・刺繍初心者さんでも楽しみながら作品を仕上げられる工夫があること。
などなど。
こんな刺繍Boxだったら欲しいよね!
きっときっと私たちらしい刺繍Boxになるはず!
風船のようにパンパンに膨らんだ刺繍Boxの夢。その実現にどれほどの時間を要し、どれほどの苦難が待ち受けているか・・・。この時点ではまだよくわかっていなかったのでした。
糸を刺すことで生まれる刺繍作品の美しさにうっとり
理想の刺繍Boxを作るために、何はともあれ、デザイン・監修をお願いするキットデザイナーを決めなくてなりません。
まっさきに浮かんだのは、ハンドメイドwebマガジン「Craftie Style」でお世話になっている刺繍作家の目黒愛さん。「Craftie Style」では、初心者向けでありながら、なんとも魅力的なお花の刺繍作品を作ってくれたことが記憶に新しく、そしてなによりも目黒さんの刺繍作品の繊細で独創的、トレンドを感じさせる新鮮な作風が、Craftie Home Boxの世界観にぴったりでした。「どうしても頼みたい」と目黒さんにお伝えすると、嬉しいことに快諾。刺繍Boxの企画が一気に前進した気分です。
https://craftie.jp/style/article/19556
目黒さんに企画の概要をお話しして、最初の打ち合わせをしたのは秋のこと。
実際に目黒さんの作品を見せていただくと、刺繍糸1本で刺された細やかな作品のなんと美しいこと! 目黒さんのように刺せるようになるには、相当な修練が必要なのもわかりながらも、糸を刺すことで作り出す刺繍作品の可能性を再認識した瞬間でした。
「作る喜び」と「飾る楽しみ」をつめた4つの作品
しばし目黒さんの作品に酔いしれた後は、この素晴らしい可能性を持った刺繍を、Craftie Homeだったらどう提案するか? 具体的なアイテムやデザインに落とし込んでいきます。
企画立案時に書き出した実現したい内容、作る喜びや飾る楽しみをうんと想像した結果、4つの作品をつめる案が浮上。キットチームでの話し合いを重ねるほど、盛りだくさんで欲張りなBoxになっていきます。毎度のことながら、険しいいばらの道へと突き進むことに。
1つめの作品は、基本のステッチ練習シートです。これは、刺繍初心者でも、無理なく楽しく基本のステッチが練習できるもの。でも、それだけでなく、そのままアートとして飾れるデザインにしたい。イメージは、そう、植物標本のような感じで!
2つめは、テーブルコーディネートとして使えるもの。実用的なものを作る場合、どうしても刺繍以外の「仕立て」の工程が入ってしまう。ここをなんとか、複雑な仕立てをせずに素敵に仕上がるものにできれば。当初、ナプキンリングやボトルラベルも模索したけれど、最終的にプレイスマットやカバーリングにも使えるものに決定。
3つめは、ちょっとアートっぽいもの。韓国インテリアなどでも人気のラインアートを生かしたものはどうだろう? 目黒さんの作品からもインスピレーションを得て、女の子がブーケを持っているような感じに。ラインの刺繍と細かいお花の刺繍をミックスしたアートのような作品にできたら。ラインを刺繍せずに下書き印刷をそのまま生かしてもサマになるような小さなアート作品に。
そして4つめは、Craftie Homeらしい、お花をプラスしたフープリースのような作品。刺繍する部分はちょっぴりにして、お花をアレンジするだけでも十分に楽しめるようなものを。
この4つの作品のデザインを目黒さんに託して、キットチームは次のステップ、材料調達へと進みます。
500色から選んだ14色の刺繍糸と刺繍専用の布
Craftie Home Boxでは、どんなキットでもそうですが、キットデザイナーとアイテムやデザインを相談していく作業と、材料や道具を調達していく作業は、ほぼ同時並行に進んでいきます。
刺繍Boxの場合、メインの材料は、もちろん刺繍糸と刺繍用の布。布はあらかじめ図案をプリントした状態でお届けしたかったので、そこも専門業者さんに頼まないとなりません。
今回、私たちがお世話になったのは、刺繍糸コスモのメーカー、ルシアンさん。 ルシアンさんが刺繍糸の取り扱いを始めたのは、1950年。当初は195色だったそうですが、現在の色数はなんと500色!高級な超長綿を使い、美しい発色とシルクのような上品な光沢が持ち味の刺繍糸です。
そして布。刺繍には大きくわけて、バツ印で模様を作っていくクロスステッチと、いくつかのステッチを組み合わせるフリーステッチの2種類があるのですが、今回の私たちのキットは後者。フリーステッチはどんな布を使ってもよいのですが、ルシアンさんでは専用の布も生産していました。
さっそくその布を見せてもらうと、さすが刺繍糸に合わせて開発しただけあって、布の厚さもちょうどよく、刺繍糸の色を引き立てる上品な色合いです。
この布だったら、初めて刺繍にチャレンジする人も気持ちよく刺せそう。私たちは刺繍糸と一緒にこの布も発注することにしました。
刺繍糸に合うことはもちろん、お花と合わせてみたらどうかな? といろいろなお花を置いてみたり・・・。あれこれ吟味しながら4色の布を選びました。
刺繍作家のプロフェッショナルな配色に感動!
目黒さんから上がってきた図案デザインを検討し、おおかた固まったら、どのモチーフをどの糸で刺すかを決めていきます。キットチームでざっくりとした配色の希望を決めたら、あとは目黒さん頼み。500色もの糸が貼られた見本帳の中から、これ!という色を選んでもらいます。
全体のバランスを見ながら、1つ1つの色を決めていく作業は、まさにプロの技。Craftie Homeはくすみカラーが大好きだけれど、それだけではちょっと優しくなりすぎてしまう。目黒さんは絶妙に濃い青をプラスしたり、ピリッとスパイスが効いた配色を提案してくれたり。そのさじ加減は、さすがプロ!
基本ステッチ10種類を刺してみる
刺繍Boxの企画が具体的にスタートした月から早3か月が過ぎ、時は年末。試作するために早く仕上げてもらった基本ステッチのマスターサンプルを見本に、キットチームで実際に刺していきます。この段階では、布にはまだ図案がプリントされていないので、人数分、チャコペーパーで図案を写すという地道な準備も。
試作会では真ん中の基本ステッチ10種類を全員がチクチク。ここでつまずいた点や生まれた疑問は逐一メモして、レシピ動画撮影に活かします。
基本ステッチのまわりのお花は正月休みの宿題! となり、この年は幕を閉じたのでした。
刺繍生活の“1か月コーデ”を試みる
新しい年の幕が開け、1年でいちばん寒い時期も粛々と準備を進めました。ようやく4作品すべてのマスターサンプル、刺繍糸や印刷済みの布がそろい、キット制作は撮影の段階へ。この撮影分は、商品紹介のwebページはもちろん、SNSやBoxに同梱するパンフレットにも使うので、毎回、さまざまなシーンを撮影します。
刺繍Boxで初めて試みたのが、「1か月を駆け抜ける わたしの刺繍ダイアリー」というもの。女性誌の人気企画“着回しコーデ”になぞらえて、刺繍Boxの4作品を、1か月の間にどんなふうに楽しむかを日記風に見せていった記事です。
いつ刺繍する? でき上がった作品はどう使う?など、普段の生活の中に「刺繍をする時間」を溶け込ませました。もちろん、「1か月を駆け抜ける」はほんの一例。半年で1作品仕上げてもいいし、1年がかりでも。
忙しく過ぎてしまう毎日の暮らしに、ほんのちょっとでもいい、刺繍をする時間を持てたなら、今よりもっと心穏やかに、優しい気持ちになれるはず。そう願いながら制作した記事です。
14時間に及ぶ動画撮影と怒涛の“編集祭り”
作品撮影が終わると、いよいよキット制作の最大の山場ともいえるレシピ動画の撮影です。毎月、レシピ動画の撮影という経験を積み重ねてきたキットチームですが、10種類の基礎ステッチに加え、4アイテムの作品の作り方、しかも仕立てもあり、のようなボリュームは初めて。
戦々恐々としながら迎えた動画撮影日。朝早くから夜遅くまで、なんと14時間にも及ぶ撮影に!まさに「キット制作でいちばん長い日」となりました。
撮影しやすいポジションをキープするため、目黒さんにはウッドフレームを高めに持ってもらい、スタッフがウッドフレームを動かないように支える、というなんとも過酷なスタイルが延々と。
こうして収録した動画は、編集作業もハンパなく膨大。撮影後は怒涛の編集祭りが待ち構えていました。撮影時間の何倍もの時間を編集作業に費やし、ついに完成したレシピ動画「基礎ステッチから学べる4つの刺繍アイテム」は、「基本編」約45分、「作品編」約60分、「仕立て編」約20分という超大作になりました。
この超大作のレシピ動画に加えて、さらに制作したのが「刺繍BOOK」です。基本ステッチの刺し方と、ステッチ名&色名入り実物大図案と作品見本を入れたA4サイズの大きめ小冊子。「動画はわかりやすいけれど、パパッと見られないのが不便」。そんな声を真摯に受け止めて、「動画」と「紙」の2つを用意したのでした。
これでもか、というくらいモリモリになった刺繍Box。みなさんのおうちには箱に入った「刺繍Box」が届きますが、Craftie Home Boxは、ただの“箱”にあらず。Craftie Homeの「メンバーページ」をクリックすれば、そこにはレシピ動画あり、ワークショップ情報あり、スタイリングアイデアあり、のまさにハンドメイド体験の“宝箱”なのです。
私たちは毎月、この“宝箱”にせっせと宝物をつめています。「お友だち招待キャンペーン」という小さな“宝くじ”も忍ばせながら。