【キットデザイナーインタビュー】カリグラフィーアーティスト島野真希さん

Craftie Homeのサブスク定期便、9Boxのハンドレタリングの監修をしてくれた島野真希さんは、今をときめくカリグラフィーアーティスト。毎月100人を超える生徒さんにカリグラフィーのレッスンを行っています。日々、アクティブに活動している島野真希さんにカリグラフィーとの出会いや普段の活動についてお話を伺いました。

 

 

幼い頃からの習い事を続けて「書道家」に

Craftie:島野さんはカリグラフィーアーティストとして活躍するかたわら、書道家「龍華(りゅうか)」としての顔もお持ちですね。書道はいつ頃から始めたのですか?

島野:書道を始めたきっかけは、なんて事はない母親からの一言で「硬筆やってみない?」と言われて通い始めたのがきっかけです。幼稚園の年中(5歳)のときでした。

Craftie:硬筆というのは、いわゆるお習字とは違うのですか?

島野:硬筆は鉛筆(6Bとか)で文字を練習するものです。子どもは筆圧があまり高くなく安定もしないので、小学生になるまでは硬筆、小学生になって初めて筆を持ち始め、硬筆と毛筆、両方始まるという感じです。

母親どうしで「習い事は何をしてるの?」といった話になり、仲良い子どもたちで同じところに通い始めるという、本当に自然な流れでした。

 

 

Craftie:幼い頃の習い事をずっと続けてついに書道家になってしまったなんて、すごいですね! 書道家「龍華」のインスタグラム(@ryukashimano)に紹介されている作品は、とってもアーティスティックでカリグラフィーの世界とも共通の世界観を感じます。

 

 

自由に表現できるのが「モダンカリグラフィー」

Craftie:カリグラフィーを知ったきっかけは何だったのでしょうか?

島野:カリグラフィーの存在を知ったのは、自分自身が結婚式をするタイミング(2009年)です。当時プランナーをしていたこともあり、「カリグラフィー」として表現されている書体の数々はフォントとしてすでに知ってはいました。でも、これを手書きできる技術があると知ったのはこのときです。結婚式ではイタリック体を見よう見まねで書いて席札にしました。現在、私の表現の柱となっているモダンカリグラフィーに出会うのはもっと後の話で、2012年のときです。

Craftie:カリグラフィーのスタイルには、イタリック体、カッパープレート体など、さまざまな種類がありますが、現在、島野さんが教えているモダンカリグラフィーとはどういう書体なのですか?

島野:現在、モダンカリグラフィーと呼ばれているのは、スクリプト体(筆記体)で表現するものの中に、筆記具や色など自分の美的感覚や個性を思う存分取り入れながら自由に表現していくものの総称だと思っています。アートに昇華させたものというかこの解釈は「今」の話なので、時代が変わるにつれ、また新しいモダンカリグラフィーの表現やスタイルが現れて、今とは違ったムーブメントを起こしてくれると思っています。

Craftie:なるほど。書き手が「自由に表現していく」書体がモダンカリグラフィーなのですね。島野さんは2016年にモダンカリグラフィー協会を立ち上げていますが、その設立意図はなんだったのでしょうか?

 

 

島野:協会を作った理由は、大きくは「カリグラフィー」という広くて深い、素晴らしい芸術が、スピード感あふれる現代の一つの流行りで終わるのではなく、より皆に定着し、多くの方に普及していくような活動ができたらいいなということ。また、ひとつの目印のようなものになれたらと思ったからです。「モダン」とつくだけに、どんどん進化していくカリグラフィーの世界をお伝えしつつ、それを皆で共有しながら楽しみ、関わってくださる方達の「らしさ」を生かしてあげられたらいいなと思いました。

 

モダンカリグラフィーや筆ペンカリグラフィーの本を出版

Craftie島野さんは、2019年にモダンカリグラフィーの本『モダンカリグラフィー 自分のスタイルを表現するハンドライティングの技術』を出版されています。この本には今、この時代のモダンカリグラフィーが1冊に凝縮されていますよね。

 

 

島野:たくさんの方に読んでいただき本当に嬉しいです。取り扱ってくれている書店さんも全国に700を超えるみたいで、このような専門書にも関わらず有難いです。基本的な道具の使い方、書き方からさまざまなフレーズ集、スタイルのバリエーション、そしてスタイルの作り方や展開の仕方など、書くことの魅力がギュッと詰まった1冊です。

「ただ練習する、ただ書く、の先が見えたり、あぁ、こんなに自由に表現していいんだと書く楽しみが増えました」って読者の方に言ってもらえることがとても嬉しかったです。

Craftie:モダンカリグラフィーの本を出版されてほどなく、『筆ペンではじめるモダンカリグラフィー』も出版されました。この本を出された経緯を教えてください。

 

 

島野:『モダンカリグラフィー 自分のスタイルを表現するハンドライティングの技術』の本が出版されるという情報解禁になったタイミングで、それを見た世界文化社の編集者さんが「島野さん、2冊目に筆ペンに特化した本を作りませんか?」と連絡をくださったのです。当時わたしはぺんてるさんと数年に渡って「筆ペン×モダンカリグラフィー」の大きなプロジェクトを進行中で、筆ペン(筆ペン風サインペン)で簡単にこんなにも可愛い文字が書けるということが世の中に広く周知され始めた頃だったのではないかと思います。

1冊目もまだ世に送り出せてないタイミングでしたが、ペンと紙さえあれば素敵で可愛い作品が作れるブラッシュの魅力に今度は絞ってよし頑張るか!と心に決めて、すぐ2冊目の制作に取りかかりました。

Craftie:「ペンと紙さえあれば素敵で可愛い作品が作れる」。まさにCraftie Home Boxのハンドレタリングキットでも提案していただきました。

 

 

創作活動、レッスン、子育てと、毎日はフル回転!

Craftie:現在の活動を教えてください。

島野:現在は月の1/310日間前後)はレッスンをし、100名~120名くらいの生徒さんを対面とオンラインで教えています。そして1/3はウエディングやイベントの筆耕、パフォーマンス、動画撮影と編集、今回のような教材監修、企業様や個人の方からのご依頼作品の制作、チャレンジとして国内外で行われる作品展に出してみたり。残り1/3は自分の感性を磨くためのインプットの時間に使ったり、友人や子どもとべったり過ごしながら家事育児を中心に回したりといった感じです。

Craftie:すごい。毎日フル回転ですね。作品展といえば、今春には、銀座POLAで「じぶんの中に 無限の色」をテーマにした作品展「IRODORI」がありました。

 

 

Craftie:島野さんは現在、3人のお子さんの子育て真っ最中ですが、1日のタイムスケジュールはどんな感じなのでしょう?

島野:基本6時間睡眠なのです。22時に寝たら→4時起きみたいな・・・

 

●島野さんの1日のタイムスケジュール

00:00 就寝
   6:00 起床、洗濯、朝ご飯とお弁当準備
   7:00 子どもたち起床、朝ご飯
   8:00 小学校組登校
   8:30
長女幼稚園送り
   9:00-13:00 ※仕事(打ち合わせや制作などの場合はこの時間)
   9:00-17:30 ※仕事(レッスンの時はこの時間)
 13:30 幼稚園お迎え
 15:00-17:30 子どもたち習い事送迎
※曜日によりけり、かつ仕事の時間に合わせて母と役割分担
 17:30 買い物
 18:00 夕食準備
 18:30-19:00 夕食、片付け、お風呂準備
 20:30 お風呂
 22:00 子どもたち就寝
 22:00-00:00 自分時間
(大体海外ドラマ見たり、アニメ見たり、漫画読んだり…)

 

Craftie:夜には「自分時間」を確保しているのが素晴らしい。仕事時間はどうやって作り出しているのですか?

島野:「子どもたちの成長に合わせて仕事のボリュームを調整し、家庭と仕事、心身ともにバランスよく仕事をする」というのがこの仕事を始めることにしてからずっと変わらず持ち続けている仕事観なのです。なので、今もなお、すごく大きなことができているわけでもないし、規模としても小さいですが・・・。

子どもが皆小さいときは忙しくなると睡眠時間を削るしか方法がなかったところから、当たり前だけど子どもたちもどんどん成長して親と密接に関わる時間が自然と減っていくので、子どもと関わる時間は変わらず大切にしながら、夫や母と上手く役割分担しながら仕事の時間を捻出しています。

Craftie:子どもの成長に合わせて自分もしなやかに変わっていく。そして家族との役割分担が、仕事時間を確保する秘訣のようですね。

 

 

世代を超えてさまざまな方に書くことの楽しさを伝えたい

Craftie:今後の抱負や活動予定、こんなことしてみたいなど、未来のお話もお聞かせください。

島野:今もなお、たくさんの方が新しくカリグラフィーやハンドレタリングを楽しんでくれています。今後のわたしの目標は、デジタルネイティブの若い世代や子どもたちに手書きやアートを楽しんでもらえるような活動や、手書きと自分の大好きな日本の伝統工芸を組み合わせたプロダクト制作にチャレンジしたいなぁと思っています。そのほか、作品展や個展も考えているので、世代を超えてさまざまな方に書くことの楽しさを伝えていけたら嬉しいです。

Craftie:島野さんの今後の活動が本当に楽しみです。インタビュー、ありがとうございました!

 

島野真希さん

幼少の頃から書道を始める。ブライダル業界でウェディングプランナーとして在籍しながら、筆を持つ仕事にも携わる。結婚、出産を機にアーティストとして独立。書とモダンカリグラフィー、和洋共に作品を制作。ハイブランドの筆耕、コラボ商品の販売、教材の監修、ウェディングアイテムなど幅広く手がける。東京都在住。
https://www.instagram.com/mscalligraphy/

 

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