日本の伝統手芸を日常に。刺し子の魅力とキットの楽しみ方

布の補強や寒さをしのぐための暮らしの知恵として広まり、日本各地で手の込んだ模様が生まれた刺し子。Craftie Home Boxでキットの制作・監修をお願いした刺し子作家の安蒜綾子(あんびる・あやこ)さんに、刺し子との出会いや魅力、今回のキットで楽しめるデザインについて詳しく伺いました。

 

 

日本の伝統刺繍「刺し子」との出会い

- Q1:安蒜さんが刺し子を始めたきっかけを教えてください。

母が作ってくれた刺し子のふきんがいつも身近にありました。あるとき刺し子の図案を見ていると「どんな手順で刺したらこの模様ができるのか?」と急に気になり、やってみたい!とビビッときました。そのまま衝動的に手芸店へ、さらしと糸を買いに行ったのがきっかけです。

 

Q2:はじめての刺し子ではどんな作品を作りましたか?また、そのときどんなところが面白いと感じましたか?

はじめて刺してみたのは、今回のキットにもある十字花刺しです。母が作った刺し子のふきんをじっくりと見ながら、どのような規則で刺したらこの図案ができ上がるのかを読み解くのが面白かったです。はじめは分からないことがあり自分なりに試行錯誤しましたが、もくもくと刺していく作業は、とても楽しいと感じました。

 

伝統を感じる柄と創作模様の魅力

Q3:刺し子には、昔から伝承されてきた「伝統柄」があります。安蒜さんが感じる、伝統柄の魅力はどんなところでしょうか?

刺し子の伝統柄には意味を持っているものが多くあり、とても魅力的です。たくさんの図案があるなかで今もなお受け継がれているということは、それほど洗練されたデザインであるということだと思います。

 

Q4:安蒜さんはご著書でもたくさんの創作模様を紹介されていますが、創作模様を考案するようになった経緯や、楽しさを教えてください。

はじめは本を見ながら刺していましたが、次第に図案をそのまま刺すのではなく、自分なりの図案を刺してみるようになりました。いろいろな図案を試していくうちに、ふきんの中で表現する図案が無限にあるように感じ、ワクワクしました。糸の色や太さが変わると同じ図案でも印象が変わるので、やりたいことが沸き上がり「次はこうしてみようかな」と考えるのが楽しいです。

 

今回のキットで作れる5つの模様について

Q5:今回のキットでは、伝統柄の「十字花刺し」「柿の花」「米刺し」、創作柄の「チューリップ」「リボン」と5つの模様を紹介します。それぞれの模様について、制作するうえでの楽しさを教えてください。

・十字花刺し
最も細かい模様で、刺しごたえがあります。一目刺しの伝統柄の中でも代表的な模様で、刺し子に興味を持った方にはぜひ刺してみて欲しい模様です。

・柿の花
横を刺し終わったあと、縦に進むと模様が浮き上がってくる瞬間が楽しい柄です。横と縦の2方向で完成するシンプルさが病みつきになり、何回も刺したくなります。

・米刺し
米刺しとはその名の通り、米模様のこと。お米がたくさん並ぶその様子が何ともかわいく、でき上がった時には何個お米があるかな?と思わず数えたくなります。

・チューリップ
私の創作模様です。斜めを刺す段階に入ると他の模様と比べて難しく感じるかもしれませんが、その分達成感につながります。伝統柄とは異なるポップなデザインを刺すことで、一目刺し模様の可能性を感じていただきたいです。

・リボン
チューリップと同じく、私の創作模様です。シンプルでかわいらしく、ワークショップでも人気を集めています。何色を合わせてもはずれのない模様なので、どんな色で作ろうかな?と考えながら制作する楽しさも味わっていただきけると嬉しいです。 

 

はじめての刺し子を思う存分楽しんで♪

Q6:今回のキットで刺し子にはじめて挑戦される方へ、安蒜さんからのアドバイスをお願いします。

刺し子は、布と糸と針があればできる手軽なハンドメイドです。空き時間に少しずつ進めることもできます。刺し子をチクチク刺す時間はヒーリング効果があり、気分転換にもなりますよ。

最初は「きれいな目で刺せないかもしれない」と不安に感じるかもしれませんが、それこそが機械には出せない味だと思って、針を進めてみましょう。うまくできなかったと思う作品でも、あとから見るといい味が出ていることが多く、記念になります。

今回のキットは、楽しくかわいい刺し子を体験できる内容に仕上がっています。ぜひ楽しんでください。 

 

安蒜綾子(あんびる・あやこ)

刺し子作家。北海道生まれ。2014年から刺し子のワークショップを開催。新しい図案を模索しながら、一目刺しのふきんを650枚以上刺してきた経験をもとに、刺し子の疑問を解決してちくちく楽しむお手伝いをしている。著書は『一目刺しの刺し子のふきん』『続・一目刺しの刺し子のふきん』(ともに、主婦と生活社)。
Instagram:https://www.instagram.com/ayakoiru/

 

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